哀愁のシベリウス、“全部盛り”の「春の祭典」~兵庫芸術文化センター管弦楽団 第131回定期演奏会~

【PACファンレポート53兵庫芸術文化センター管弦楽団 第131回定期演奏会】

3月19日の演奏会は、ザールブリュッケン・カイザースラウテルンドイツ放送フィルハーモニー交響楽団と日本フィルハーモニー交響楽団の首席指揮者を務める、フィンランド出身のピエタリ・インキネンが初登場。この日のソリスト、川久保賜紀とは同じ師(ザハール・ブロン)の下で学んだ仲だとPACのツイッターで紹介されていて、息の合った演奏が期待できそうだと楽しみに出かけた。

 

劇場に着いてステージを見て、その大編成ぶりに驚いた。プログラムで紹介されている演奏者は、なんと106人! PACのOB・OGもヴァイオリン11人、チェロとコントラバスが3人、ヴィオラとフルート、オーボエ、クラリネット、トランペットが各1人参加して総勢19人。かつてない規模で、これはもう、祭りではないか。まさに“春の祭典”だ。

インキネンが登壇した瞬間、海外からの初めての指揮者を定期演奏会に迎えることが久しぶりだという思いが沸き起こり、それが得難い喜びなのだと感じた(後で調べたら2020年2月の第121回ロッセン・ミラノフ以来で、まさに2年1カ月ぶりのことだった)。

そしてまた、PACのコアメンバーやこの日出演したOB・OGにも海外出身者が21人いる。まさにPACはインターナショナルなオーケストラなのだとの思いを新たにした。

 

2022年3月のプログラムの表紙

最初の曲はインキネンの母国フィンランドの大作曲家ジャン・シベリウス(1865-1957)の交響詩「フィンランディア」。フィンランドの独立を求めて作られた曲を、ロシアによるウクライナ侵攻が長引く中で聞くと、一刻も早い戦争の終結を祈らずにはいられなかった。

 

ソリストの曲は、同じくシベリウスの「ヴァイオリン協奏曲」。哀愁を帯びた曲調をリードするヴァイオリンに、孤高の精神性が感じられる。川久保は素晴らしい集中力で、起伏に富んだ麗しい曲を見事に演奏した。30分余り、短い旅をしたような気分になった。

ソリスト・アンコールは、コンサートマスターの田野倉雅秋とのデュエットで、レスピーギ「シチリアーナ」を演奏。アイコンタクトを取りながら主旋律を交互に奏でる姿は、合奏する喜びに満ち溢れ、幸せな気分にさせられた。大きな拍手を浴びた。

 

そして、イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)のバレエ音楽「春の祭典」。2015-16シーズン開幕の9月の第81回で、佐渡裕芸術監督が指揮したのを聞いて以来だから、ほとんどのメンバーは初めて手掛ける大曲だ。

使われる楽器も多彩だ。

フルート奏者がピッコロ持替で演奏する曲は多いが、この曲はオーボエがイングリッシュ・ホルン持替、クラリネットはバス・クラリネット持替、バスーンがコントラ・バスーン持替、ホルンがワーグナー・テューバ持替と、一人の奏者が二つの楽器を演奏せねばならない。

ティンパニは2人、パーカッションは4人で大太鼓、シンバル、アンティーク・シンバル、タムタム、タンバリン、トライアングル、ギロといった多彩な音色を繰り出す。

それぞれの楽器が複雑なリズムで勝手に演奏しているようなのだが、インキネンのタクトが巧みにまとめ上げていく。その様子は、ラーメンのトッピングに例えると“全部盛り”! 野趣に富んでいるが、粗野ではない。ゴージャスで、エネルギーに満ち溢れている。フレッシュな演奏を身上とするPACならではの「春の祭典」だった。

オーケストラのアンコール曲は、シベリウス「悲しきワルツ」。「春の祭典」でホールに満ちた興奮と熱気を静めてくれた。

 

ゲスト・トップ・プレイヤーは、ヴァイオリンの戸上眞里(東京フィルハーモニー交響楽団第2ヴァイオリン首席)、ヴィオラの柳瀬省太(読売日本交響楽団ソロ・ヴィオラ)、コントラバスの黒川冬貴(京都市交響楽団首席)とトランペットのハラルド・ナエス(京都市交響楽団首席)はPACのOBだ。スペシャル・プレイヤーはバスーンの中野陽一朗(京都市交響楽団首席)、ホルンの五十畑勉(東京都交響楽団奏者)、ティンパニの岡田全弘。

PACのOBが2人もゲスト・トップ・プレイヤーとして兵庫の舞台に戻って来るなんて! “祭り”のようにハッピーな気分にさせてくれる演奏会だった。(大田季子)




※上記の情報は掲載時点のものです。料金・電話番号などは変更になっている場合もあります。ご了承願います。
カテゴリ: PACファンレポート